ruruの読書ノート
ビジネスからコミックまで基本あっさりたまに熱く記す個人の読書感想&備忘録
『十角館の殺人』綾辻 行人
2009年11月01日 (日) 22:42 | 編集
十角館の殺人 (講談社文庫)十角館の殺人 (講談社文庫)
(2007/10)
綾辻 行人

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十角形の館が建つ孤島・角島を訪れたミステリ研のメンバーたち。
館を建てた建築家中村青司は、半年前に焼失した青屋敷で焼死していた。
テーブルに置かれたプレート通りに次々に殺人事件が起こる。
犯人は仲間の誰かなのか、それとも・・?

綾辻行人デビュー作にして館シリーズ第一作。
クリスティの「そして誰もいなくなった」をモチーフにした孤島ミステリーである。

有名ミステリを例にとったマニアックな推理はミステリファンにはたまらないし、舞台や登場人物などの構成はよく考えられている。

しかしながら怖いくらいに!よめてしまった。
犯人があからさますぎないだろうか?
伏線が多すぎるせいかもしれないが、かなり早い段階で気付く。

動機や建築家中村青司の存在の弱さ、運任せ的な殺人方法、など気になるところも多い。

どうもミステリファンの自己愛的小説の印象が強い気がする。
ただ、いわゆる”本格”のムードはたっぷり味わえるところはたまらない。

読了日:2009.11.1
★★★★☆ 

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『春の魔法のおすそわけ』西澤 保彦
2009年11月01日 (日) 21:59 | 編集
春の魔法のおすそわけ春の魔法のおすそわけ
(2006/10)
西澤 保彦

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女流小説家小夜子は酒を飲んで記憶をなくし、気づいた時には2000万円入った見知らぬバッグを持って朝の街をさ迷い歩いていた。
考えあぐねた結果、小夜子はこのお金を使い切ってしまうことに決めた!
そして桜の木の下にたたずむ美青年を見つけて声をかける。
「きみってさ、タバコ、吸う?」
ある春の日のちょっとした冒険ミステリー。

小夜子は独身で親しい身内も友人もいない40代女性。
そこそこの小説家として何とか食べてはいるけれど、よくよく考えてみると心が何だか満たされていない・・。

2000万円の現金を手にしたことで何かが変わることを期待するのだが、連れとなった美青年のおかしな反応のせいでどうも調子が出ない。

40代女性と美青年という組み合わせながら、小夜子が年上のいい女風でないところがミソかもしれない。
はちゃめちゃでやけくそな小夜子とクールに彼女をいなす若者優弥のかけあいが面白い。

小夜子のあまりにも飾らない言動が人間味溢れていて好感が持てる。
格好悪くてリアル。

西澤さんはどうしてこんなに女性になりきって書けるのだろうか?
それはないよ、というところもあるけれど小夜子視点の描写がとても現実的だ。

一気にさらっと読めてしまう軽い小説だが、爽やかに気持ちよく読めた。
大人の女性向けかもしれない。

読了日:2009.11.1
★★★★☆


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『龍神の雨』道尾 秀介
2009年11月01日 (日) 09:39 | 編集
龍神の雨龍神の雨
(2009/05)
道尾 秀介

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継父と暮らす蓮と楓、継母と暮らす辰也と圭介。
蓮と楓の継父が死に、死体を隠すところを辰也と圭介に目撃されて・・。
4人の子供たちの運命が台風の中交差していく。

作品中常に降り注ぐ雨が冷たく、そして激しい。

すれ違う親子、兄弟。
家族とは何か?

「−家族ってのは爆弾なんだ」と辰也は言う。

子供たちの”選択”は彼らを深い穴へと導いていく。

2組の兄弟の心情が切々と伝わってきて引き込まれてしまう。 
共に複雑な家庭にいる少年少女たちの心理描写が繊細で痛い。

この作品を鬱蒼とした雰囲気にさせている雨の使い方もとても巧い。

最初からどんでん返しを予想しながら読み進めてしまったので、正直結末に驚きはなかった。
しかし伏線は張り巡らされていてうまくまとまっている質の高い作品だったと思う。

読了日:2009.10.
★★★★☆

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『薔薇窓』帚木 蓬生
2009年10月31日 (土) 21:58 | 編集

薔薇窓〈上〉 (新潮文庫)薔薇窓〈上〉 (新潮文庫)
(2003/12)
帚木 蓬生

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薔薇窓〈下〉 (新潮文庫)薔薇窓〈下〉 (新潮文庫)
(2003/12)
帚木 蓬生

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パリ警視庁特別医務室に勤務する精神科のラセーグは、犯罪者や警察に保護された者の診断を行っている。
日本の文化に造詣が深いラセーグは、保護されてきた失語症の日本人患者音奴に興味を持つ。
時は1900年、万博開催で沸くパリの街で外国人女性の誘拐が相次いでいた。
音奴の過去、ラセーグにつきまとう貴婦人、誘拐犯の正体と多くの謎が絡まりあう中で、 ラセーグは音奴との交流を深めていく。

タイトルの「薔薇窓」は、主人公ラセーグが好きなシテ島サント・シャペルの薔薇窓を現す。

パリ万博や当時のパリ市民の生活や文化、また日本や海外での日本人の様子などが生き生きと描かれており、自分が当時のパリの街に立っているような錯覚に陥る。

ラセーグは日本の骨董品を集めるのが趣味の日本びいきでということで、ところどころに日本文化やフランス人から見た当時の日本像が書かれている。
そのため、パリを舞台とした小説でありながら日本的要素も強く編みこまれた作品になっており、純粋な海外小説とはまた違う趣がある。

猟奇的事件の謎解きよりも恋愛的な要素や人間関係の描写の方に力が入っているので、ミステリーを楽しむというよりも、帚木さんらしい美しい描写を堪能した作品だった。

読了日:2009.10.
★★★☆☆

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『ソロモンの犬』道尾 秀介
2009年10月31日 (土) 11:55 | 編集
ソロモンの犬ソロモンの犬
(2007/08)
道尾 秀介

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大学生秋内静の目の前で、准教授椎崎鏡子の息子陽介が事故死する。
車道に飛び出した愛犬オービーに引きずられてトラックに轢かれたのだ。
静は、オービーの暴走のきっかけを作ったのが友人の京也ではないかと疑問を持ち始める。

静、京也、ひろ子、智佳は大学での親しい仲間である。

熱血純情派の静とどこか冷めた印象の京也。
女の子らしい京也の彼女ひろ子とボーイッシュな智佳。

そこに加えてクールビューティーな准教授鏡子に変人の動物生態学者間宮、京也の実家は金持ちだが影があり・・等等いかにもな設定が青臭いが、青春ミステリーなのでそれも楽しんでしまえば良いのかもしれない。

物語は静の智佳への恋心と友人京也への疑惑が軸になって進む。

兄弟のように仲が良かった陽介とオービー。
オービーの行動を動物生態学的に解明していくのが面白い。
また、最終的に解明された事実もなるほど、と意外性があって楽しめた。

ただ、ソロモンの指輪やバベルの塔があまり意味なく使われていたり、二人目の死者が・・などと言っておきながら事件性が薄かったりと、広げようとしたけれど広がらなかったような中途半端な伏線が多い印象は受けた。

もっと面白くなるような気配はたっぷり漂っているのだが、微妙に未完成な感じである。
道尾秀介への期待が高すぎるだけかもしれないが。

読了日:2009.10.31
★★★☆☆

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『魚神』千早 茜
2009年10月30日 (金) 22:25 | 編集
魚神魚神
(2009/01/05)
千早 茜

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かつては一大遊郭で栄えたとある島で、白亜とスケキヨは姉弟として育てられていた。
相手がいるからこそ自分の存在を確かめることができる・・二人は強い絆で結ばれていたが、やがて別々に身売りされ、引き離されてしまう。
島で評判の遊女となった白亜だったが、心は常にスケキヨを求めていた。
一方スケキヨは事件を起こし終われる身となって・・。

雷魚と遊女白亜の伝説、その伝説の遊女と同じ名を持つ美しい白亜、姉に劣らず美しいスケキヨ。

幻想的で倦怠感ただよう異世界を舞台に、白亜とスケキヨの魂がぶつかり、求めあう。

世界観やストーリーはどこかで見たようなありがちなものだ。
漫画的な気もして、内容は浅い。

しかし引き込まれるように一気に読ませるものはあり、デビュー作と考えると完成度は高いのではないだろうか。

読了日:2009.10.30
★★★☆☆


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『流星ワゴン』重松 清
2009年10月30日 (金) 21:52 | 編集

 

流星ワゴン

流星ワゴン
(2002/02)
重松 清

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永田一雄はリストラで職を失い、息子の暴力と妻の不倫で家庭は崩壊、離婚寸前で全てに絶望しているところだった。その上、故郷の父は疎遠なまま余命いくばくもないという状態である。
「・・もう死んだっていいや・・。」駅前にたたずんでそう考えた時、1台のワゴン車が目の前で停まる。
それが幽霊の橋本さん親子がナビゲートする過去へのドライブの始まりだった。

主人公の一雄と息子の広樹、一雄と父親のチュウさん、そして橋本さん親子の父子の物語である。

橋本さん親子は、免許取得直後のドライブで事故死した幽霊親子。
息子の健太君が成仏できずにいるため、もう5年もドライブを続けている。

父親は朋輩のチュウさんとして一雄と同じ歳で現れ、共にこの車の乗客となる。

死を望んだ息子と死にかけている父親。
生と死の狭間に存在するモノたちが時空を超えて共に旅をするのである。

一雄と父親であるチュウさんは、同じ父親の立場となり、対等な付き合いをすることで初めて心を近づけることができるようになる。

「親の心子知らず」「子の心親知らず」とやりあうシーンがあるが、互いに愛情がないわけではない。
ただ分かり合えなかったのである。

一雄と広樹もそうではないのか。

一雄も特別家庭を顧みない父親というわけではないようである。
少しずつの心のずれが大きなひずみとなって二人の距離を引き離しているのだ。

物語は、2世代の父子の触れ合いやそれぞれの心の動き、葛藤などが丹念に綴られていく。

人生に取り返しがつかないことはない。

橋本さん親子とのドライブはそのことに気付かせてくれる。

橋本さん親子に至っては、死んでからこそ父子の絆を深めたことになっているのだ。
この辺は希望をこめたファンタジー的な作りだが。

大切な分かれ道である過去へドライブ、というタイムスリップネタはありきたりだが、その過去でどんなにあがいてもやり直せないところがこの小説の面白いところだ。

色々と抵抗を試みても、決して起こったことは変えられない。
過去は過ぎたこととし、今ある現実を受け入れて道を切り開いていくべきだという姿勢が良い。

ただ、永田家にしろ橋本家にしろ母親の影が薄い。
徹底して男同士の物語なところが、女の私としては100%感情移入できずやや残念だった。

読了日:2009.10.29
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『鬼蟻村マジック』二階堂 黎人
2009年10月30日 (金) 19:47 | 編集
鬼蟻村マジック (ミステリー・リーグ)鬼蟻村マジック (ミステリー・リーグ)
(2008/07/23)
二階堂黎人

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先祖は鬼だとされる鬼蟻村の旧家上鬼頭家。
水乃サトルは会社の先輩竹美に頼まれ、結婚話を断る為の偽婚約者として上鬼頭家の法事に同行する。
しかし、宴会の席に予期せぬ後継者が現れたことで、上鬼頭家を舞台に次々と殺人事件が起こり・・。

探偵水乃サトルシリーズ。
「閉鎖的な村の旧家で起こる骨肉の争いと密室トリック」という本格的な舞台背景はわくわくするが、どうもそのトリックが弱い気がする。

真犯人は意外だったが、途中の事件や過去のトリックなどは大分前から読めてしまう。
サトルの活躍が弱いのもやや残念だ。

多少物足りないが、全体的にはどっぷりと本格ミステリの雰囲気が味わえて楽しめた。

読了日:2009.10.27
★★★★☆

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『夢は枯れ野をかけめぐる』西澤 保彦
2009年10月30日 (金) 19:15 | 編集
夢は枯れ野をかけめぐる夢は枯れ野をかけめぐる
(2008/08)
西澤 保彦

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羽村祐太は失業中の48歳の中年男である。
責任を負うのが怖くて結婚もせず、貯金を趣味に地味に暮らしてきた。
そんな祐太の周りで起こる不思議な事件の数々、6編。

殺人事件などではなく、リアルな生活ミステリーがメイン。
全体的に介護などの高齢者問題を取り上げているので、地味ながら身につまされる事件ばかりである。

凝った謎も派手なアクションもなく、地味な中年男が他人の家庭内の出来事に巻き込まれたり、謎を解いたり、人助けをしたり・・と淡々と進む連作集。

働くのが嫌いだけど出世してしまったり、結婚に興味なんかないのに女性にもてたりする祐太のキャラクターが良い。 

祐太には好感が持てるし、続編も色々書けそうだからどんどん広がって続いていかないかなあ・・と期待しながら読んでいたが、最終話を読む限り作者にそのつもりはないようだ。
その点が残念だが、6編でしっかり物語をまとめ上げているので仕方無いかもしれない。

読み進めるにつれ、色々な登場人物が絡み合っていく様が面白い。


読了日:2009.10.28
★★★★☆

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『悼む人』天童 荒太
2009年10月29日 (木) 00:30 | 編集

 

悼む人悼む人
(2008/11/27)
天童 荒太

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第140回直木賞受賞作。
事件・事故に限らず、人の死んだ場所で”悼む”行為をしながら日本全国を旅する坂築静人。
彼は一体何を思いこのような旅を続けているのか?

購入後かなり長い間放置しており、やっと読む気になれた。

”悼む人”である静人は、死者が「どんな人に愛されたのか、感謝されたのか」を周囲に聞きこみながら、その死に場所で独特の儀式を行いながら日本中を旅している青年である。

静人の行為は完全に自己中心のものでしかなく、心を閉ざした狂気の世界だ。

しかし、彼のことを気味悪く思う者が多いとは言え、時に遺族の気持ちを和らげ救うこともある。
”いつまでもその人の存在を忘れずにいて欲しい”という遺族の願いを受け止めてくれる存在だからだろう。

人は近しい人の死ですら、時と共に思い出とし、乗り越えて自分の人生を歩んでいくものだ。

それは悲しみに明け暮れて前進できなくなることへの防御本能でもあり、平等に訪れる死を冷静に受け止めている証でもあると思う。

死を軽んじてはいけないが、静人のように死に囚われるのは愚かなことだ。

純粋さは嫌悪すべきものではない。
静人の気持ちが切なく伝わってくるところもある。
しかし、いき過ぎては自らの首を絞める諸刃の刃とも言える。

作品では、静人に惹かれていく人物として、人の死に慣れ過ぎた裏ジャーナリスト蒔野と殺人の前科者倖世が登場する。
極端な人物像だが、純粋に死を受け止め続ける静人と相反する人間として描かれているのだろう。

二人は静人とは別な意味で死に囚われている。
そのため、相反するようでいて静人とは紙一重、彼に強く惹かれるのである。

「死を追い続ける静人・蒔野・倖世側」、「生にこだわりつづける坂築家側」と物語は視点を交互に変えながら進んでいく。

愛が溢れる家族に背を向け、自分の母に死が迫っていることも知らずに他人の死を悼み続けている矛盾。

最終的に、静人にとっては母の死ですら赤の他人の死と同等になったのではないかと感じた。
平等に人を悼むということはそういうことだろう。

生きているからには常に死がつきまとう。
生があってこそ死があるのであり、それは決して切り離せない影のようなものである。

静人は影に取り込まれてしまっている。

”巡る”という文字を使った名前の母巡子は、最後に孫の誕生を見届けて旅立った。
生は確かに次の世代に受け継がれたのだ。
肉体は滅びても家族の中に巡子は生きていく。

最後まで生きようとした巡子だからこそ後悔のない旅立ちができたのである。
母の愛が届き、静人が”こちらの世界”へ戻ってくることを願いたい。

作品全体の感想としては、詰め込み過ぎている印象を持った。

読後感が何となくすっきりしないが、読み応えはあり、作者が時間をかけて構想した大作であることは確か。

読了日:2009.10.
★★★☆☆

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